インパクトの高い論文数分析による日本の研究機関2023年版

~日本の高被引用論文の総数は増加し、昨年に引き続き世界第12位を維持, 3分野は世界10位以内~

2023年5月22日
クラリベイト・アナリティクス・ジャパン株式会社

クラリベイトは、高被引用論文数の分析による日本の研究機関ランキングを発表しました。本分析は、後続の研究に大きな影響を与えている論文(高被引用論文)数をもとに、世界の中で日本が高い影響力を持っている研究分野において、国内で特に存在感のある研究機関を特定する試みです。

クラリベイトでは各研究分野における被引用数が世界の上位1%に入る、卓越した論文を高被引用論文と定義しています。高被引用論文は、影響力の強い研究者である高被引用論文著者の選定をはじめ、論文の卓越性を客観的にはかる指標として広く使用されています。

 

今回の分析で日本の高被引用論文の総数は、昨年と同様世界第12位でした。論文数および高被引用論文数は伸びながらもその割合0.96%と堅持しています。分野別では、5位以内が化学、物理の2分野、10位以内では材料科学が3分野で入っており、これは昨年から1分野減少しています。

 

日本国内で総合分野ランキングのトップ20の内訳は、大学が15、研究開発法人が5となりました。昨年からランクインしたのは近畿大学になります。上位9位までは変動がありませんが、今年は国立がん研究センターが10位にはいりました。

 

これらの研究機関の全てにおいて、その高被引用論文の割合は、日本全体での平均0.96%を上回っています。全般的に研究機関の高被引用論文の割合が高い傾向は引き続き続いており、特に国立がんセンター、物質・材料研究機構は3%、理化学研究所は2%を超えています。大学で最も高被引用論文の割合が高かったのは東京大学でした。インパクトの高い論文を多く輩出していることがわかります。

 

分野別でみると、化学、物理、材料科学分野では、総合分野にランクインしている大学、研究機関がランクインしています。しかし地球科学では海洋研究開発機構、気象研究所、宇宙航空研究開発機構といった研究機関がランクインしています。免疫学、植物・動物学では上位1、2が拮抗しています。その一方で、材料科学の物質・材料研究機構や、物理学の東京大学は突出しています。

 

「国内研究機関の総合分野トップ20

<表1> 総合/General(世界12位)

*大学共同利用機関法人 自然科学研究機構は構成する 下記機関(国立天文台、核融合科学研究所、基礎生物学研究所、生理学研究所、分子科学研究所、生命創成探求センター、アストロバイオロジーセンター、新分野創成センター、岡崎統合バイオサイエンスセンターの組織名を名寄せした集計値です。

*東海大学機構は、構成する名古屋大学と岐阜大学を個別に集計しております。

 

「分野別トップ10

<表2> 化学/CHEMISTRY(世界5位)

<表3 > 物理/PHYSICS(世界5位)

<表4> 材料科学/MATERIALS SCIENCE(世界9位)

<表5> 植物・動物学/PLANT & ANIMAL SCIENCE  (世界11位)

<表6>免疫学/IMMUNOLOGY(世界11位)

<表7>地球科学/GEOSCIENCES(世界11位)

  • 国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)は戦略的に科学技術イノベーションの創出を推進するファンディングエージェンシーとしての事業内容を鑑みランキングには入れてありませんが、高被引論文数は450報、高被引用論文の割合は2.1%でした。

 

【本分析に使用したデータベース】

Essential Science Indicators™(以下ESI)

 

【高被引用論文(Highly Cited Papers)の定義】

ESIは、科学全体を大きく22の研究分野に分類しています。そして、それぞれの分野において被引用数が上位1%の論文を高被引用論文(Highly Cited Papers)と定義しています。

 

引用は分野によって動向が異なること、一般的に論文発表から時間を経るほど多くなることを踏まえ、各年・分野別の高被引用論文を特定し、集計しています。

 

本分析は、ESIに収録されている世界の研究機関情報から、日本の各研究機関が上記条件でどれだけインパクトの高い論文を出しているかに注目しました。高被引用論文を多く輩出する研究機関は、比例してその分野で関心を集める傾向があります。そのため、これら相対的定量データは、世界的な学問・研究にどれだけ影響力を持っているか、その機関の世界での位置を示唆するひとつの有力な指標となります。

 

【データ対象期間】

2012年1月1日~2022年12月31日 (11年間)

ESIの22分野分類の詳細と定義については、こちらをご覧ください。

 

【Essential Science Indicatorsとは】
分析に用いたEssential Science Indicatorsは、学術論文の引用動向データを提供する統計データベースです。学術文献・引用索引データベース「Web of Science® Core Collection」の収録レコードをもとに、論文の被引用数から、世界のトップ1パーセントにランクされる研究者と研究機関の情報をそれぞれ収録しています。収録データは2か月ごとに更新されます。 Essential Science Indicators 製品概要

【InCitesとは】
InCites は、Web上で提供され、カスタマイズにも対応した、引用文献に基づく研究評価ツールです。学術機関や政府機関の管理者の皆様は、研究者の生産性を分析し、ベンチマーキングの結果を世界中の研究機関と比較することができます。InCites 製品概要

【Web of Scienceとは】
Web of Science は、Web of Science Core Collectionをはじめとする膨大な量の高品質な文献コンテンツを包括し、自然科学、社会科学、人文科学の情報の迅速な検索、分析、共有を支援する最高水準の調査研究プラットフォームです。Wef of Science 製品概要

 

【データのダウンロードはこちら】

2023年のデータはこちら

2022年のデータはこちら

2021年のデータはこちら

2020年のデータはこちら

2019年のデータはこちら

2018年のデータはこちら

2017年のデータはこちら